蘇岸築堤記念碑

日本の川と災害 > 日本の川 > 木曽川水系 > 木曽川 > 蘇岸築堤記念碑  Last update 2007/05/11



蘇岸築堤記念碑
   参議院議員 藤井丙午書


(裏面)

 蘇岸水害予防組合の沿革
 本地域は、元行政上笠松町、八剣村、下羽栗村の三町村に跨る木曽川本堤外長約三粁、地積五十町歩、
住家約百五十戸、古より木曽川出水の都度年々数回、浸水の被害を蒙り家屋、田畑の流失、河岸陥没等の
災害は枚挙に暇なく、祖先代代何卒して本堤を河岸に移築し、洪水による惨害を免れん事を渇望久しく、
漸く明治政府の木曽川改修を機に本堤移築の運動を起し、これが実現を期する為、昭和十年十一月蘇岸水
害予防組合を設立し、公共団体として発足、爾来組合費を徴し、河岸の災害復旧工事の施行に当りつつ、
本堤移築の陳情を推進した。 然し不幸にも満洲事変を契機に戦火拡大、河川工事も頓挫した。 この間、
昭和十三年七月に木曽川有史以来の大洪水は、内務省計画洪水位を七十五糎も突破し、当組合区域全戸浸
水、家屋数戸流失の大被害を蒙ったので、是以上他を頼っては居られないと組合会の決議により、最高限
度の賦課金を徴し、組合單独事業として木曽川の警戒水位に堪え得る小堤を河岸に築造計画を樹て、昭和
十六年度より護岸築堤工事を起工、以後毎年継続、昭和二十六年全区間の小堤が完成し、中洪水による災
害を阻止することが出来た。 然し此間にも本堤移築の運動は寸時も弛めず促進した。 当局も組合員の
熱意を了とされ、過去の最大洪水である、昭和十三年七月の洪水位に等しい高さの堤防を国営事業として、
昭和二十七年度着工の運びとなり、茲に初めて組合設立目的の第一歩が達成した。 然るに本工事中昭和
三十四年の伊勢湾台風、続いて三十五年、三十六年と連年災害にその破壊力の脅威に鑑み、かかる小堤に
て木曽川の洪水に堪え得るか、又住民が斯の如き小堤を頼る安易感が禍し、避難の時期を逸し、惨事を起
す基となるを憂い、切に当局の決断を促し、此際是非共本堤移築の要望を強力に懇請歎願した結果、幸い
にも当局の理解ある計画の元に、昭和四十一年度より着工が決定した。 然しこの事業遂行には住家五十
余戸の立退きを要したので、該当者は一時動揺したが全組合員が一致団結、宅地造成に協力して当局の指
示通り二年間に全戸立退きを完了し、工事は予定通り進行、昭和五十年度を以て築堤全線竣功の喜びを迎
えた。 これ実に組合設立以来満四十年、地域住民が永年夢寐だに忘れ得ぬ本堤完成の念願を克ち得た反
面、巨額の負担に耐え小堤を完成して基礎を造り、幾多の難関を突破して来た努力と、国及県当局の絶大
なる理解と援助とが渾然一体、協力の賜でどの労苦に対し、深甚なる敬意と感謝を表すると共に、この世
紀の大事業が完成した事により、将来、この地域の繁栄と住民の福祉に貢献することの偉大なるを確信し
て、茲に本組合の沿革を彫してその歓びを傅える。
     事務局長 高橋末太郎 撰文
  昭和五十三年二月吉日建立
          蘇岸水害予防組合

建設省木曽川上流工事事務所長
 梶谷 薫  矢野勝正  上ノ土実  小西則良  佐藤 史
 金子收事  西畑勇夫  南部三郎  栂野康行  北野 章
 笠原繁雄  山口専一  金屋敷忠儀 和気三郎  寺田斐夫
木曽川第一出張所長 相葉 忠  山田頼孝  細野 信
 野瀬武雄  水野栄三  岩間庄平
参議院議員 岩沢忠恭  衆議院議員 大野伴睦  野田卯一
衆議院議員 大野 朋  県議會議員 古田 好  山本清之助
岐阜県知事 武藤嘉門  松野幸泰  平野三郎  上松陽助
組合管理者 武藤 巌  塩田啓一  加藤文治  青井逸雄
協力団体 笠松町  岐南町  岐阜県地方競馬組合
組合會議員(設立以来就任順)
 (以下略)


木曽川「笠松円城寺の二重堤」
 笠松町円城寺から、同町若葉町にかけての木曽川の堤防は、もとは懸け廻し堤と呼ばれる小堤であった。以前のこの区間の木曽川本堤は、現在県道として利用されているもので、大きく「く」の字形に堤内側へ屈曲していた。
 この小堤は、地元住民の手によって築きあげられたものであったが、木曽川洪水の際には決壊し、旧本堤と小堤との間の耕地宅地約六八haはさながら遊水池の様に湛水し、大きな被害を受けていた。地元蘇岸水害予防組合は、やむを得ず自らの負担で小堤の改修などを行ったが繰り返し水禍を受け、国による本堤なみ改修を強く念願し続けていた。
 この為、昭和四十一年になって、国より小堤を新たに本堤とする改修事業が着手され、昭和五〇年度に約二七〇〇mの現在の新堤が完成した。
 これにより、旧本堤と新本堤の間の耕宅地は積年にわたる水害の脅威から解放された(当時の住家は約五〇〇戸)。
 蘇岸水害予防組合はこの事跡を讃え、永く後世に伝える為、築堤最上流部に「蘇岸築堤記念碑」が建立された。
      国土交通省




日本の川と災害 > 日本の川 > 木曽川水系 > 木曽川 > 蘇岸築堤記念碑  Go Topページトップへ

メール送信 kasen.net Copyright(C)